■探求と発見
現在執筆中の小説「真夏の空席」において、主人公の朱鷺子は美大を目指す。
その過程における葛藤を描く中で、さて私は、そういった類いの絵を描いた事が無かった事を再認識する。俄然興味が沸き、実際に描いてみて、体験することにした。
そうしてデッサンや、色のある絵をアナログで練習しやってみると、様々な発見があった。下記にこれをまとめる。
・質感は本物以外伝わりにくい。紙面に筆で描いた絵は、質量を持った物体である。インクも、黒鉛と粘土も、質量と体積を持ってそこに存在している。
・スキャンすると光の加減で消えていた混色が浮かび上がる。それは鉛筆画でも実は同じ。X線解析された絵を見ているようで面白い。
・総じて、描かねば分からぬ、描けば分かる部分が、全てでは無いが確かに存在する。そして、創作の本質は同じであると実感する。
なお、細かいところで知った所は下記の通り。
・アナログ画材は高い。朱鷺子は美大に入ってもきっとバイトを続ける。
・質感を出すのは執念。鉛筆画では特に如実。
・白は消す道具というより描く道具と意識する。プラスチック消しゴムは淡い陰影のモチーフ程威力を発揮する。汚れかと見紛う濃淡を調整し続けたとき、急激にそこに“質感”が浮かび上がる。あまりの変化に自分でも驚く。
・嫌でも画材の知識がつく。
・ハイユニで描いた線は赤みを帯びる(スキャンすると如実)