■「PARALLEL/CYGNUS」創作の為の工程備忘録

現在取り組んでいるのは、「L’écrin -Saphir-」収録の「真夏の空席」の小説化である。

本編に至るプロセス、過去を描くに都合が良く、また短編以上の執筆において検討してきた技法で、本当に長編が書けるかの確認も兼ねている。

そして何より、本編における主人公・航一郎の経歴であり履歴であり、心理推移を明確にする事がある。彼は何を思い、どのような経験・体験を経て本編へと至るのか。
それを把握せずして、本編の彼を知る事は出来ないと思った。私はまだ、彼を知る必要がある。

一人称で進行し、視点は二人の間を行き来する。航一郎の視点、朱鷺子の視点。
シナリオは「真夏の空席」中の設定資料(http://cygnus-cc.com/manatsu-no-kuseki/)に準じれば、半分程のところまで来た。
すなわち、休憩時間に朱鷺子の絵を見るシーンとなる。

原作の設定資料では何気なく絵を見たようなニュアンスにも受け取れるが、描いている内に少し重いシーンになった。設定は変えていないが、ニュアンスが変化している気がする。
作為的というより、流れ上これが自然となった。
他人にはじめて絵を見られる、それも航一郎の考えが変化し、彼女の絵から受けた印象が、その絵への想いが、結末や自身の課題に対する答えを決めていく。
すなわちそれは重要なシーンであり、双方の体験に熱量があるべきだろうと思った。
悩んだ結果、客観的な物語性より、自分が当人ならどうするかで内容を決める、という事で落ち着いた。
腑に落ちる理屈とは、展開とは、自分ならこうする、にあからさまな違和感を生じないのもである。


結末は原作通りだが、後は具体的に彼と彼女の至る行動・そしてそれぞれが出す解は、まだ未定だ。方向性は分かっている。だが、人間の経験・体験・選択・行動・心理は時系列に進行する。
ならば愚直に、彼らの経験をなぞるべきであろう。その時間の積み重ねが、結末へと至る。


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